2022年7月18日(月・祝)~31日(日)にかけて
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夢は、お菓子で人を笑顔にすること。
夢は、お菓子で人を笑顔にすること。
千古里の空とマドレーヌ
ちこり
我妻和樹監督作品
製作・配給:ピーストゥリー・プロダクツ/監督・撮影・編集:我妻和樹
音楽:佐藤真紀/ナレーション:MIHO/整音:川上拓也/共同プロデューサー:佐藤裕美
2021年/日本/113分/(問い合わせ:peacetree_products@yahoo.co.jp)
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あのとき、誰かのために動きたいと思ったすべての人に贈るドキュメンタリー。
宮城県南三陸町を舞台に描かれる、夢を追うパティシエとボランティアたちの物語。
映画について
2011年3月11日―東北地方を中心に未曾有の被害をもたらした東日本大震災。「被災地」と呼ばれるようになった地域には世界中から大勢のボランティアが駆け付け、粉骨砕身して支援活動にその力を尽くした。泥かきやがれきの除去、炊き出しや避難所での支援など、ボランティアたちの活動は多岐にわたり、震災後9年半が経過した今でも被災地の人びととの交流を続けている者も少なくない。
災害ボランティアや被災地支援活動といった行為が語られるとき、携わるボランティアたちの善意や行動力といったものへの称賛が伴うことが一般的である。「困っている人の力になりたい」という、利他的で真っ直ぐで、崇高な精神。震災直後は、そうしたボランティアに関する美談が連日のように新聞紙面を埋め、東北から遠く離れた地に暮らす人びとの関心をも大いに集めて止まなかった。
しかし一方で、被災地の人たちにとってみれば、ある日突然、大災害によって否応もなく押し付けられてしまった「支援者―被支援者」という構図の中で、その心の内には非常に複雑で繊細な思いがあったことは想像に難くない。そしてボランティアの中には、そうした思いや相手の状況を慮り、試行錯誤しながらも、自らの善意が空回りしてしまう者もいれば、熱心さのあまり、自分本位な支援に陥ってしまう者がいたということも事実であった。
こうしたボランティアのあり方や思いの行き違いをめぐっては、当時からさまざまな矛盾や課題が浮き彫りになっていたが、いずれにしても、多くのボランティアが被災した人びとと向き合う過程で、「自分は本当に役に立てているのだろうか」という、真摯な煩悶と隣り合わせで活動を続けていたのは確かであろう。そしてさらに、こうしたボランティアたちの背後では、被災地に駆け付けたくても叶わなかった何十倍、何百倍もの人びとが、「自分にも何かできることはないだろうか」と思いを寄せていたのである。
本作は、こうしたたくさんの人びとの思いを背負い、「お菓子で人を笑顔にしたい」と被災から奮起する一人のパティシエとその家族と、彼の夢を応援するボランティアたちの物語である。映画の舞台は宮城県南三陸町。主人公のパティシエは震災前、義理の母が経営するペンションでお菓子作りをしていたが、地震と津波で集落は壊滅。高台でたった一軒だけ残ったペンションも、建物に亀裂が入り、営業断念を余儀なくされて、家族は仮設住宅での生活を強いられる。物語は震災後お菓子工房となったこのペンションと仮設住宅を軸に、被災の爪痕が残る街の風景を透き通るような空気とともに映しながら展開する。
撮影時期は 2011 年 12 月から 2012 年 4月にかけての5ヵ月間で、それは、被災を経てお菓子作りを再開してから事業として軌道に乗るまでの時期に当たる。その間、3 人の小さな子どもを抱えながら、被災を越えて寄り添い支え合う家族の絆、菓子職人としての矜持、そして自問自答しながら彼らに関わり続けようとするボランティアたちの葛藤が、瑞々しく温もりのある映像とともに描かれる。それは一見すると小さな世界の話のようにも思えるが、彼らの紡ぐ物語は「“復興”とは何なのか」「新しい街がどのような人びとの手によって形作られていくのか」といった、大きな問いをわたしたちに投げかける。
こうして震災から 1 年後の被災地に生きる人びとの姿がわたしたちに問いかけるものは、時代を超えた普遍性に満ちており、本作を通してわたしたちは、「人を支える」とは、「人のために悩む」とはどういうことなのか、人と人が「ともに生きる」ことの本質に迫るための手掛かりを手に入れられるのではないかと思う。そして映画のラストでは、被災地に根を張り、復興に向けて歩み続けてきた主人公たちの現在の姿を描くことで、夢を持ち続けることの強さを伝えたいと考える。それは東日本大震災以後、全国各地で災害に遭われた多くの方々にとっても励みになるのではないかと信じている。
主人公ご家族
※2012年5月撮影
監督プロフィール 我妻和樹(あがつま・かずき)
1985年宮城県白石市出身。
2004年に東北学院大学文学部史学科に入学。翌2005年3月より、東北歴史博物館と東北学院大学民俗学研究室の共同による宮城県本吉郡南三陸町戸倉地区波伝谷での民俗調査に参加。2008年3月の報告書の完成とともに大学を卒業し、その後個人で波伝谷でのドキュメンタリー映画製作を開始する。
2011年3月11日の東日本大震災時には自身も現地で被災。その後震災までの3年間に撮影した240時間の映像を『波伝谷に生きる人びと』としてまとめ、2014年夏に宮城県沿岸部縦断上映会を開催。その後国内最大の若手映画監督の登竜門として知られるぴあフィルムフェスティバルの「PFFアワード2014」にて528本の応募作品の中から21本にノミネートされ、日本映画ペンクラブ賞を受賞。2015年以降全国の映画館にて公開される。
その後震災後の続編に当たる『願いと揺らぎ』が完成し、アジア最大級のドキュメンタリー映画の祭典として知られる山形国際ドキュメンタリー映画祭2017の「インターナショナル・コンペティション」にて世界121の国と地域、1,146本の応募作品の中から15本にノミネート。2018年以降全国の映画館にて公開される。
2021年11月には令和3年度宮城県芸術選奨新人賞(メディア芸術)を受賞。現在は東京を拠点に活動を進める傍ら、みやぎシネマクラドル代表など、地元宮城の映像文化発展のための取り組みもしている。
なお、『千古里の空とマドレーヌ』のペンションOh!ingのご家族には震災前からお世話になっており、本作撮影時には仮設住宅で寝食を共にしながら撮影していた。その距離の近さから紡がれる映像が本作の大きな魅力となっている。
ピーストゥリー・プロダクツ(我妻和樹監督)公式サイト(https://peacetreeproducts2.wixsite.com/mysite)